この詩編の作者は口を閉ざし、沈黙しています。口を開くと舌で罪を犯してしまいそうだからです。この作者にも言いたいことはたくさんあったはずです。悪しき者がさまざまなことをたくらみ、作者を嘲ったことでしょう。ですから、反論・弁解をしたり、相手を罵倒し、言い負かそうとする思いも湧いてきたことと思います。
しかし、この作者は、苦難の中で沈黙します。自発的にという以上に、神にそのように導かれ、そのようにさせられていたのかもしれません。自分の言い分を述べたり、自己弁護をすることがいけないとは思いません。きちんと自分の立場を明確にすることも必要でしょう。けれども、そのような、ある意味で、自分の権利を放棄するように主が求められることがあるかもしれません。
この作者は、自分の先祖を導かれた主を仰ぎます。私たちはこの地上ではあくまでも宿り人・寄留者です。この作者はこの地上で勝ち誇ることよりも、主に身を寄せ、主の御国に生きる者としてこの地上を歩むのです。