詩編74編

しかし神よ、いにしえよりのわが王よ
この地のただ中で、救いの業を行われる方よ。(12)

 この詩編が造られた時、イスラエルは非常に大きな危機的状況の中に置かれていました。他の国によって聖所が荒らされ、エルサレムは廃墟とされていました。敵対する者たちは民を嘲り、イスラエルの民は自分たちが神から捨て置かれているように感じています。そしてそのような苦しみがいつ終わるともしれないと感じているのです。
 そのような中で、この作者は、神を「いにしえよりのわが王」「救いの業を行われる方」として仰ぎます。そして、イスラエルの民は、神がかつてしてくださった力あるみ業を思い起こします。具体的にはイスラエルの民がエジプトから救い出された時のことです。これを「出エジプトモチーフ」と言います。出エジプトの出来事を思い起こすということは決して過去の栄光にすがりつくということではなく、彼らの歴史の原点に返るということでした。そこに立ち返ることのよって彼らは自らの信仰を取り戻したのです。